2020.8.30
全国病弱教育研究会主催の学習会に参加しました。
小児医療センターの家族会(遺族会)でご一緒した、群馬できょうだい児支援で活躍されている先輩からご招待いただき夫婦で参加しました。
講師には私達夫婦の目標でもあり、カズマが闘病中は大変お世話になったNPO法人こどものちから代表の井上るみ子さんがおられ、とても楽しみにしていました。
勉強した内容をまとめつつ、感想をお伝えできたらと思います。
とても長くなってしまったので2部構成にしたいと思います。
きょうだいの成長プロセス
一人目の講師をされた東京都立大学健康福祉学部看護学科の山本美智代先生の講義では、きょうだい特有の体験(経験)と成長プロセスにについてのお話がありました。9年間に渡ってアンケート調査を実施した研究の結果について教えて下さいました。
障がいや疾病を持ったきょうだいがいる場合に起こりやすい心の変化を年代や環境による場合分けを行いながら分析されていました。
きょうだい特有の体験
普通ではなく特別な境遇であるということを知る体験
きょうだいの障がいや病気について気づくのは姉や兄なのか妹や弟なのかによって違いますが、概ね小学生ころで、小学生になると今の境遇が「普通ではない」「うちは特別なんだ」という自覚が芽生えるとのことです。さらに、環境によっては、社会の障害者感を知ることにより「障がいがあることは劣等」「恥ずかしいこと」という認識になっていくこともあるようです。
この時、それを誰にも相談できないことが多く、親にも相談できないケースもあるとのことですが、きょうだいが二人以上いる(障がいを持っているきょうだいを入れて3人以上)場合は下のきょうだいは上のきょうだいを見て心の準備ができているケースも多いようです。
この時期では、自由に話せる、表現できる場があると良いとのことでした。また、先輩きょうだいからのアドバイスや両親自身が子供の頃障害者に対してどのように感じていたのかを考えることも役に立つかもとのことでした。
自分だけ小児病棟に入れないという体験
自分だけ小児病棟に入れないという体験もきょうだいにとっては大きな負担になる体験で、「自分はここには入れない【いけない子】」と考えたり、中の様子やきょうだいの様子を親から聴いてもイメージできないことによって話もできず、疎外感もかなり強く感じたりするようです。
ユリナも小児病棟の扉の前で何度も泣いてました。プレイルームが見える大きな窓から中の様子をずっと見ていた姿を思い出します。
きょうだいが言う「病院に(お見舞いに)行きたくない」という言葉の裏には「親を取られる寂しさ」「特別な境遇ということが受け入れられずきょうだいと距離を置きたい」という気持ちがあるようです。この時、親は病院に行くことを強制することはせず、親とふたりきりの時間を作ったり、思いっきり遊ぶ時間を作るようにすることが大切であるとのことでした。
たまにユリナがお墓に行くのを嫌がることがあります。この時にもユリナは同じような気持ちを感じているのかなと思いました。
家族の話に入れないという体験
病気や障がいをもっているきょうだいについて夫婦間で相談することは多々あります。ひそひそと小さな声で真剣な顔をしてにし合っていることが良くあると思います。うちもよくやっていました。その時、その会話に入れないきょうだいは「とても大事な話をしているようだ」ということがわかりつつも「自分は役に立たない人間なんだ」「この家にはいらない子なんだ」という気持ちになってしまうようです。そんなときには、医療者やスタッフからきょうだいに病気や障がいの説明を行い、きょうだいにできることを話してもらうことが大切であるとのことでした。
カズマが闘病中ユリナはまだ1〜2歳でしたが、カズマが病気であるということは理解していたように感じます。最後往診してくれた主治医の先生が「ユリナにもちゃんと伝えないとだめだよ。この子は分かってるよ。」と話してくださったことを思い出しました。
きょうだいの成長プロセス
きょうだいは最終的に大きく3つのシナリオを持つ傾向があるということでした。ここで言う「シナリオ」とは兄弟姉妹に障がいや病気があることできょうだいに向けられた、あるいはきょうだいが捉えた障がい・病気の意味やその意味に応じてとる行動のことを言います。
はじめは親のシナリオに同調することが多いようです。親が考えるシナリオは「きょうだいは見守り役」だったり「家事を手伝う役」だったりして、家族の役に立てることが嬉しい反面、思春期では「なんで自分はみんなみたいに遊べないんだ」と負担に思うこともあるとのことです。親は病気がある子どもの分まできょうだいに期待することがあり、それがきょうだいにとっては大きな負担になることもあるようです。
私が好きで応援しているユーチューバーのにゅーいん君の動画で妹さんが出てくるものがありますが、そこで妹さんがおっしゃっている「『お兄ちゃんの分までがんばって』と色んな人に何度も言われてきた。(中略)人に人の人生を背負わせるのはやめよう。」というのは心に刺さりました。この動画を見て私も決して妹のユリナに「カズマの分までがんばって」など思わないようにしようと心に刻みました。下の動画を是非御覧ください。
その後、社会のシナリオに出会います。環境によっては出会わない人もいます。社会のシナリオは「障がいがあることは劣等」「そのきょうだいはからかいの対象になる」といったネガティブなものです。そしてこの社会のシナリオに同調するタイプと同調しないタイプに分かれます。
社会のシナリオに同調⇛自分のシナリオの形成をするタイプ(Aタイプ)
社会のシナリオに同調し、後ろめたい気持ちがありながらも病気・障がいがある兄弟姉妹のことを隠したり、地元から遠い高校を選んだりします。
その後、良き理解者に相談できたり、友達に兄弟姉妹の障がい・病気のことを話せるようになったりすることで、徐々に自分のシナリオを形成し始めます。
20歳前後になると兄弟姉妹と2人だけで外出ができるようになったり、障がい・病気をもっている兄弟姉妹が居ることが自分の強みのように感じることもできてくるとのことです。
このタイプは最終的には肯定的なシナリオを形成するタイプです。
社会のシナリオに同調しないタイプ(Bタイプ)
偏見に満ちた、否定的な社会のシナリオと出会わなかったり、出会っても社会の偏見に同調しない心構えができていたりするとこのタイプになるとのことです。上のきょうだいがいたり、両親自身が社会の偏見に同調していないケースが多いようです。
兄弟姉妹の障がい・病気については理解していても恥ずかしいこととは思わず、自分から兄弟姉妹の障がい・病気についてあたり前のこととして友人に話すタイプです。
このタイプははじめから否定的なシナリオを通らないタイプです。
自分のシナリオづくりに取り組まないタイプ(Cタイプ)
最後は社会のシナリオと出会ったあと、自分のシナリオづくりを行わず、否定的なシナリオのままのタイプです。
Aタイプのように遠くの学校に進学するなど、その時々で適度な距離をとれなかったことや、兄弟姉妹の障がいが軽く、障がいが重い人に恐怖心を感じたりすることでこのタイプになりやすいようです。
また、早いうちから社会的な自立が要求されることで親への愛情欲求が強くなってしまったり、兄弟姉妹を中心として作られる親のシナリオに不満を抱いてもそれを表出できなかったりすることも要因のようです。
大人になっても兄弟姉妹は自分にとって負担という認識で、兄弟姉妹と必要以上に言葉を交わさなかったり、友人にも障がいのことは言わないタイプです。
幼少期に親から愛情を十分に感じられて育ったかが重要なように感じました。
また、社会のシナリオにも出会う出会わないで違うようにも感じました。
質疑応答の時間があったので質問してみました。
Q「小学生にとって障害者は【普通ではない】ためどうしても偏見や否定的なシナリオを描きやすいと思いますが、社会のシナリオをどうしたら変えられるのでしょうか?できることはありますか?」
A「この研究は2007年に行ったもので、現在も同じようにきょうだいの学生に話を聴くことがありますが、最近の子たちは自分がきょうだいだったという認識ではいない子が多くなりました。否定的なシナリオに出会わなかったということだと思います。昔よりも今は町中やテレビの中で障害者を多く見るようになり、【普通ではない】という認識ではなくなってきているのではないでしょうか」
とのことでした。社会は好転しているということに嬉しくなりました。
感想
とても濃い内容に本当に勉強になりました(うまくまとめられず申し訳ないです)。
やはりきょうだい支援は必要なことだなと感じました。全国的にきょうだい児支援を行っているNPO法人しぶたね(https://sibtane.com/)さんや、群馬で「きょうだい同士でなんでも話し合える場、思いっきり遊べる場」を提供しているきょうだい会Shirabe(https://www.facebook.com/shirabe0121/)さんの活動はやっぱり素晴らしいなと改めて感じました。↓は2月に私達夫婦もShirabeさんのきょうだい会イベントに参加してきたときの記事です。
私達もこのような活動を小児医療センターを中心に定期的にやりたいなと改めて思いました。
特に「外で思いっきり遊べる」をテーマにアウトドア中心のイベントができたらなと思っています。
だいぶ長くなってしまったので、こどものちからの井上さんのお話については次回の記事にしたいと思います。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
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