余命宣告。ウルトラマン助けて。メイク・ア・ウィッシュの奇跡。②

闘病記録

2019.7.25~8.2 【思い出】

前回の続きです。前回の記事はこちら。

前回は「余命数日か」と告知され、いとこ達やじいじやばあばなどみんなに来てもらったけどカズマは元気が出ず、おしっこも止まってしまい体調はますます悪くなっていることをお伝えしました。

今回はウルトラマンに助けを求めたところから始まります。

メイク・ア・ウィッシュ 当日 ウルトラマン参上!

メイク・ア・ウィッシュの担当者さんとの連絡

前回の記事で「日曜日にウルトラマンとティガが来てくれることになった」と載せましたが、実際はその時そこまで詳細は決まっていませんでした。
実際は「ウルトラマンフェスティバル参加をやめて病室にきてもらう」ということが決まっていただけで、日時も誰が来るかも決まっていませんでした。

28日日曜日になり、もういよいよおしっこも出ておらず、医師との連絡で今日しかないと決まりました。
メイク・ア・ウィッシュの担当さんから電話で
「円谷プロにお願いしたところ今日行けるのはウルトラマンとウルトラマンティガとのことです。よろしいでしょうか。」とお話があり、カズマが一番好きなのはガイアでしたが、マンもティガももちろん好きなのでお願いしました。

今日決まったことが実行されるという臨機応変さに心から感謝しました。

エンドキサン(抗がん剤)投与

その後、利尿剤によりわずかに尿が出て、綱渡り的にエンドキサンを入れました。
主治医より「エンドキサンが引き金になり命を落とすことも十分ある。医師によっては入れない判断をする方が多い状態」との説明がありましたが、最後の頼みで入れていただきました。
腫瘍崩壊症候群のリスクも考え少なめに300ミリ入れました。

メイク・ア・ウィッシュみなさま到着!事前に少し打ち合わせ

メイク・ア・ウィッシュの担当スタッフさん、円谷プロのコーディネーターさん、円谷プロ専属アクターさんが病院に到着されました。アクターさんは到着後すぐに控室に入り、私たちもお会い出来ない形でした。

はじめに簡単な流れの確認や注意事項など打ち合わせをメイク・ア・ウィッシュの担当さんとコーディネーターさんと私たち夫婦で行いました。

  • 部屋にいるカズマに会った後はコーディネーターさんが色々促してくれる
  • 触ったりしても大丈夫 握手したりハグしたりできる
  • 家族による写真撮影は禁止 スタッフさんが撮ってくれる
  • 大好きなウルトラマンでも実際に会うと怖がってしまう子が少なからず居る

などお話しました。
最後の「怖がってしまう」というのが少し心配でした。いとこたちが来てくれてもテンションが上がらず、一緒に遊ぶことができなかったので、今の体調の悪さだともしかしたらウルトラマン達でもカズマを喜ばすのは至難の業なのじゃないかと。

カズマの病室は個室(状態が良くないと家族との面談なども加味して個室に移される)だったのですが、看護師さん協力の下、ベッドや機器などを外へ出して広くしました。
カズマ、ユリナ、じいじ、ばあば、3人のいとこたち、妻の姉、私たち夫婦で待機していました。

カズマは体調の悪さによりずっとぐずってメソメソ泣いています。
「大丈夫かなあ」と不安いっぱいでした。

ウルトラマン達に会う前のカズマ ぐずったり寝たりの繰り返しでした

ウルトラマン登場!

お部屋の入り口のところで車いすに乗るカズマをあやしていると、ウルトラマンとティガがお部屋に入ってきてベビーカーの横にしゃがんでカズマの肩を撫で、手を握ってくれました。

突然のウルトラマンとティガの訪問にカズマは大喜び!!
「ウルトラマンだ!ティガだ!うわああ!!!」と。
満面の笑みです。

この笑顔が見られただけでもう大成功。

私

良かったねーカズマ!カズマが頑張ってるからウルトラマンとティガが来てくれたよ

カズマ
カズマ

すごいすごい!やったー!うれしい!ありがとう!ウルトラマン!ティガ!

私

良かったね。嬉しいね。

カズマ
カズマ

でもなんでみんな泣いてるの?

私

びっくりしちゃってさ。ウルトラマン達に会えて嬉しくって。
ごめんごめん。

周りを見ると主治医や副主治医や科長、看護師さんたちも来てくれていて、私たち家族だけでなく看護師さんも泣いている方がいらっしゃいました。
みんな涙を拭いてウルトラマン達との触れ合いを楽しみました。

その後カズマは、ウルトラマンと一緒にファイティングポーズしたりスペシウム光線をしたり、ティガからゼペリオン光線を教わったり、カズマがタイガに変身してポーズしたり、代わる代わる抱っこされたりぎゅーっとハグされたり、二人のカラータイマーを触ってパワーをもらったり、プレゼントをもらったり、、、

私

カズマ、カズマの将来の夢はなんだっけ?

カズマ
カズマ

ウルトラマンティガになること!

私

え、ウルトラマンじゃなかったっけ?

カズマ
カズマ

うーんとね、ティガになりたい!

喜ぶティガとガクッとうなだれるウルトラマン。みんな大爆笑。

私たち夫婦にもマンとティガが熱い熱いハグをしてくれてパワーをもらいました。
「応援してるよ」と言われたようで嬉しくて泣きそうでした。

最後にみんなで記念撮影してヒーロー達は世界の平和を守るために出動です。

カズマ
カズマ

ウルトラマン!ウルトラマンティガ!頑張ってね!

カズマは終始お月さまのようなまんまる笑顔でした。
カズマにとっても、私たち家族にとっても最高の体験になりました。
「夢の一つが叶って良かったね」と思いました。

あんなに辛そうだったカズマが元気になり、ウルトラマンの力をひしひしと感じました。
やっぱりウルトラマン大好きなんだなと実感しました。
この日の夜、カズマはウルトラマンとティガの夢を見たとのことで、次の日嬉しそうにそのことを話していました。元気良く。確実にパワーを受け取っていました。

後日メイク・ア・ウィッシュからいただいたアルバムや写真立など ぼかし加工してます

主治医との相談 今後について

おしっこが少しずつ増えるが、まだ少ない

ウルトラマン達が帰った後、おしっこが徐々に増えていきました。それでもまだ少なく、2時間で10ミリほど。

カズマはウルトラマンのパワーをもらって元気を少し取り戻しましたが、やはり辛いようでぐずったり寝たりを繰り返していました。

エンドキサンは入れていますが、依然としてカズマの状態は良くなく、全身の浮腫、気道が狭く酸素吸入も必要な状態、アシドーシス傾向が続いていました。

予断を許さない状態が続いていました。
会社にお願いをして来週いっぱい「子の看護休暇」を取りました。

29日月曜日 主治医との面談

2019.7.29 いとこやユリナから声をかけられても反応乏しく、ぼーっとしてることも多かったです

朝の回診のあと、副主治医より「最期の時をどこで過ごしたいか考えていますか。自宅で看取りたいなら準備する必要があります。おしっこが出て少し持ち直してきた今なら帰ることもできます。」と話がありました。

前回の面談の時に覚悟はしていたことですが、エンドキサンを入れることができ、ウルトラマンからもパワーをもらえて、「もしかしたらまだ回復するかもしれない」と期待を少し持ち始めたところだったためかなり心がへし折られたことを覚えています。

心臓をぎゅーっとわしづかみにされているような状態でした。苦しくて苦しくて仕方ありませんでした。夫婦で話し合って決めることを伝え、面談が組まれました。

心が不安定なまま、到底死の受容なんてできていないまま夫婦で話し合いました。
訪問看護ステーションで働いている身であり、経験上、自宅で家族に囲まれて最期の時を過ごせることが幸せだなと漠然と考えていたこともあり、自宅での看取りの方向でまとまりました。
ショックのほうが大きくあまりよく覚えていないのが正直なところです。

主治医との面談で「自宅でみんなで送ってあげたい」と伝え、群馬に帰ることに決まりました。

群馬の主治医に連絡 転院→自宅での看取りの流れに

主治医が群馬で治療していたときの主治医と連絡を取ってくれて着々と転院の準備が行われました。

転院の時に救急車は使えない(県をまたげない)ため民間救急車を使うとのことでした。民間救急車には業者がたくさんあり値段もそれぞれ(結構なお値段)ですが、酸素吸入が必要なこともあり適切なところを師長さんが探してくれました。
民間救急車には副主治医が乗ってくれることも決まりました。

自宅で看取るための準備も群馬の主治医が進めてくれていました。
訪問看護ステーションや往診医も選んで声をかけてくださっていました。

「カズマは死んじゃうんだ」と思うと胸が苦しく痛く、カズマの前に居られずトイレに引きこもっていました。
「どんなに辛くてもカズマの前では笑顔で居よう」と心に決めていましたが、笑顔でいることが辛くて逃げ出したのです。

尿量は徐々に増えて2時間で40ミリほどになりました。

病棟のお友達のパパママから励ましのお言葉をいただく

明らかにカズマの調子が悪く、私たち夫婦の表情も暗いため、病棟のパパママ達はカズマの状態について気づいていたと思います。
そんな時、妻に声をかけてくれました。

「子どもはすごい力を持っている。絶対大丈夫。親が子どものちからを信じてあげなくちゃ。諦めちゃダメだよ。」

その言葉で勇気をもらいました。

そうだ、まだ分からない!徐々におしっこも出てきてる!ウルトラマンに会えてから元気も少し取り戻した!大丈夫!このまま良くなる!そう信じよう!絶対治る!

この時から「絶対治る」を合言葉にして、日々自分に言い聞かせて心をなんとか保っていました。

その後も度々病棟のお友達のパパママから励ましの言葉をもらい精神面を支えて頂きました。当事者同士の助け合いの重要性、話を聴いてくれる・アドバイスしてくれる人がいることの大切さを学びました。(この経験が今の私たちの原動力となっています)

30日火曜日 集団回診にて

奇跡が起こりました。

尿量が増加し2時間で100ミリに。朝から調子がよく食欲まで出てきました。血液検査の結果、腫瘍崩壊がしっかりと起こっており、劇的に改善方向へ。
エンドキサンが思った以上に効いてくれたようでした。

集団回診で科長より「このデータでこの元気ならまだ治療を続けていくこともできそうだね!今日の転院は断っておくね!」とお話がありました。

願いが通じたと思いました。このまま良くなっていくことをひたすら祈りました。
尿道カテーテルに少しずつ溜まっていく尿が愛おしく、夫婦で「がんばれーがんばれー、いっぱい出ておくれー」とつぶやきながら尿バックを見つめていました。
その様子を見ていた科長が「祈りが通じて徐々に増えてるね」と声をかけてくれて、忙しいはずですが長い間私たちのところに居てくれて言葉をかけ続けてくれました。
「ほらまた出てきた」「出てきてる。増えてきてる。」「私はまだまだカズマ君は良くなると信じてる」と。その言葉に希望を抱かずにはいられませんでした。

群馬の主治医からの電話

主治医より現在のカズマの状態について群馬の主治医へ話がいったのでしょう。群馬の主治医から電話がきました。

「改善傾向で良かったです。ただ、この体調の良いタイミングで群馬に帰って同様の治療を継続しながら(エンドキサンは群馬でも使えるので)自宅での看取りに備えていくことも選択肢の一つですが、どうされますか?」と提案されました。続けて、
「今日明日の転院なら病室も確保できるし、往診医と訪問看護の手配も出来ています。1度やめてから次の土曜日など週末に体調崩してやはり自宅に帰りたいとなっても対応できるか分かりません」と。

ここで治療を継続していくか、群馬に帰るかの選択。でも心は決まっていました。

このままここで治療を継続することを選択しました。
理由は小児腫瘍科科長が「私は一馬くんがまだまだ良くなることを信じてる」と言ってくれたこと。今回エンドキサンを入れることを決めたのも科長(主治医は反対だった様子)。この先生がいるこの病院でもう少し治療をしてみたいと思いました。

なにより、「まだ諦められない。他の治療方法も絶対見つかる」と信じていました。

「色々と手配もしていただき大変申し訳ないのですが、こちらでの治療を継続します。」

エンドキサン追加

尿量が増加していて腫瘍崩壊症候群のリスクが低くなったこともありエンドキサンを400ミリ追加しました。

その後尿量がさらに増加し、2時間で300ミリほど。利尿剤中止になりました。
食欲も出てきてハッピーターン、おっとっと、スーパーカップ、裂けるチーズなど色々と食べられました。

おっとっとを食べるカズマ ピースをする余裕が出てきました

31日水曜日、8月1日木曜日と順調に回復

その後も順調に回復し、いとこ達やユリナとも元気に遊べるようになりました。

この調子ならウルトラマンフェスティバルや外泊にも行けそうだね」と主治医達よりお話がありました。

2019.7.31メイク・ア・ウィッシュでティガがもっと好きになりULTRA−ACTを買ってもらったカズマ
2019.8.1 ウルトラマンタロウ(カズマ)とウルトラマンセブン(ユリナ)

ウルトラマンのパワーはやっぱりすごかった! 次回予告

ウルトラマン達に会えたことが転機になり回復していったように思います。
もちろん、抗がん剤が効いてくれたのが良かったのですが、メイク・ア・ウィッシュのあの体験が、あの満面の笑みがナチュラルキラー細胞を増やし、がんをやっつけてくれたと思います。

ありがとう、ウルトラマン!ウルトラマンティガ!

またしても長くなってしまったので次回に持ち越します。
次回は「ウルトラマンフェスティバル」、「ついに自宅へ外泊」です!

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