2019.10.1 日記
退院しました。もう病院には戻りません。
本日の治療とカズマの様子
キロサイド実施後6日目。本日朝の採血結果を聴かずに朝から緩和ケア診療所へ面談に伺いました。本日の採血結果はサマリーに入っていると思われますので明日訪問看護の方に聞こうかと思います。
昨日主治医に在宅医と面談をセッティングしていただきましたので、9:00より面談してきました。
カズマは昨日夜更かししている(痛みが強く中々寝付けませんでした)ので多分お昼過ぎまで寝ているのではないかと思いましたが、一応おばあちゃんにお願いしました。
緩和ケア診療所へ面談に行きました。
地元では在宅緩和ケア医としてとても有名な先生の所へ行きました。看取りしてきた数1400人以上。私が勤務している訪問看護でもやり取りがあり、以前一度だけお会いしたことがありました。
すぐに自宅への看取りに入ろうと思って面談に来たわけではありませんでした。これまで奇跡を信じてカズマは絶対治るという気持ちで支えてきたこと自体うそではありません。ただ、カズマの希望として「お家で過ごしたい」という気持ちがあることも事実で、本当に最期の時には自宅で看取りたいという気持ちがありました。
そんな気持ちの中、面談が始まりました。
どうされましたか?
再発後東京の病院で根治を目指して頑張ってきましたが、根治は難しいと判断され、東京の病院ではできることがなくなり、近くに家族がいる群馬に帰ってきました。最期の時は自宅でみんなに囲まれて送ってあげたいと思ってこちらに来ました。
最期の時っていつですか?具体的に
えっと、、、
現在小児医療で抗がん剤治療をしていて、効かなくなっているのですが、帰るタイミングがなんとも判断しづらいところです。残された時間をカズマの楽しいこと好きなことをして過ごさせてあげたいという気持ちはあります。
今行っている治療というのは治そうという治療ですか?延命ですか?
・・・
延命ですね。
親御さんなら治ってほしい、僅かな可能性にでもかけたい、一分一秒でも長く生きてほしいと思うのは当然です。でもそれは親の気持ちですね。では、本人はどうでしょうか?4歳だからまだわかりませんか?本当にそうでしょうか?現状治る治療ではなく延命治療をしている中で本当に一分一秒でも長く生きることが大事と思っているでしょうか。本人の希望に全力で答えてあげる時期なんじゃないでしょうか。
私の方針として絶対に揺るがないところは「本人の希望が最優先」であることです。
・・・
・・・
そうだと思います。実際に帰るタイミングというのはどのように考えればよろしいでしょうか。
今カズマ君が生きているのは点滴や抗がん剤治療でつなぎとめてるからですよね。それならもうタイミングというのは今だってそのタイミングではないでしょうか。
飛行機で例えるなら着陸しようと下降しているところを無理やり治療という気球に鎖で括り付けているようなものです。そのうち鎖が切れ墜落します。それが最後まで病院で治療を続けてそのどこかで急になくなるということです。治療という気球から解き放ってあげて低空飛行でもいいからゆっくり着陸できるようにしてあげるのが緩和ケアです。その方が長く飛べることも少なくありません。
一分一秒でも長く、と治療を続けると最終的に亡くなった時、「失敗」という経験になります。本当に一分一秒長くなっても満足なんてしません。亡くなった時、必ず負の感情が湧きます。私は最期に「残念でした」という係をするのはもうやめました。
本人の希望を叶えることに全力を尽くして関わると最期の時、よくやった、素晴らしい人生だった、それを応援できたという「成功」という経験になります。本人も家族も最期の時を満足して過ごせます。自分の人生最期くらいは好き勝手に生きたいというのは当然ですよね。私はこういう方やそれに賛同している家族を応援したいと決めています。
ここで、今まで先生が関わってこられた患者さんの残された家族のインタビュー映像を数組見せてもらいました。どれも死後一週間後のインタビューでした。みんな笑顔で満足そうに看取った時のことを話されていました。お母さんが亡くなった小学生の女の子も笑顔で「ママは良い人生だったって言ってくれた」と話していました。お母さんと約束した中学受験はちゃんと勉強して受かったとのことでした。
最近、イライラしたり怒りやすくなったり暴力的になったりしていて精神的に不安定なところがみられています。ずっと我慢させてきたから限界なのかもしれません。
家族の期待に応えようと頑張ることはよく見られます。でも体が悪くなってきて辛くなってきているのに、がんばって治療を続けよう、がんばって食べて、がんばって飲んで、がんばって、がんばってがどんどん辛くなり最終的には「死にたい」になります。死なないための治療をしているのに、本当は死にたくないのに、死にたいくらい辛くなるのです。家族と本人が違う方向を向いているということです。
緩和ケアに入ると家族も本人も同じ方向を向いて、本人の希望に忠実に支えていきますので精神的に辛くなることは少なくなります。がんばろうではなく、本人に愛と感謝の気持ちを伝えて伝えてこれでもかっていうくらい伝えて、幸せを感じてもらうことを応援する。それが大事です。
カズマは本当に頑張ってくれていたので、今までもカズマが望むことは叶えたくて、できるだけ外出して、おもちゃ買ったり、ウルトラマンのイベント行ったりしてきたのですが・・・
ちゃんと本人の希望を叶えてあげてきたのですね。でもそれは半分だけですよね。本当の希望を全部叶えてあげていない。これからは全部叶えてあげるようにしてあげたらいいんじゃないですか?もちろんできることできないことはあるけど、できることは全部叶えてあげたら。
病院に帰ってカズマに希望をちゃんと聴いてみます。
どうするか決まったら連絡をください。
病院に帰ってカズマに聞きました。
今日はお家に1日泊まって病院に帰る予定だったけど、退院しても良いって。カズマの好きにして良いって。どうする?
退院する!もう病院には来ない!
それから嬉しそうにいつもよりテンション高く過ごしました。
自宅に帰って訪問看護、往診医とカズマの初顔合わせ
先生に電話して、カズマに聞いたら退院したい希望があり、今日退院になったことを伝えました。先生から何時ごろ家にいるか尋ねられたので、「訪問看護が16時半に来る予定になっています。ここを出られる時間が分からなくて、たぶんここを出た後カズマはおもちゃ屋さんに行きたがると思うのでおもちゃ屋さんによってから家に帰りますが、訪問看護が来る16時半までには家に着くようにしたいと思います。」と話すと、「カズマのしたいことを優先させてあげてね。訪問看護は時間遅らせられると思うから。急かしたりしちゃだめだよ。」と。本当に本人最優先が徹底している先生なんだなと思いました。
病院での諸手続き、看護師さんや先生への挨拶や写真撮影をして、病院を後にしました。最後まで親身になってくださった看護師さん、先生には感謝の気持ちでいっぱいです。本当に良い方々でした。素晴らしい病院です。急な退院だったのでカズマのことが大好きな看護師さん達みんなに挨拶できず残念でしたが、近くなのでまたご挨拶に行きたいと思います。
おもちゃ屋さんでおもちゃを買って自宅に帰ると案の定20分の遅刻でした。訪問看護の看護師さんと管理者さん2名が待っていてくださり、すぐに先生も到着しました。
看護師さんたちはカズマと打ち解けるのが上手で、いつからか医療者嫌いになってしまったカズマも普通に話していました。
先生は変な音がするおもちゃや手笛で音で興味をつりつつ、近づいていきますが、医療者嫌いのカズマはむすっとしたままです。音作戦は不発に終わった先生は親を巻き込んで手品で興味を引こうとしますが、パパを使おうとしたことに腹を立てます。どんだけパパ好きなんだ。それでもあの手この手でカズマと仲良くなろうとしてくれる先生の気持ちが徐々にカズマに通じてきて、カズマが買ってきたおもちゃを使ってみんなで遊ぶことができました。先生とも普通に会話して最後にはバイバイと手を振ることもできるようになりました。
いい先生と看護師さん達に巡り合えたと思いました。
病院で持たせてくれた薬を一通り見て先生が「この薬どうする?別に飲まなくていいけど」と。「一応飲ませてみようと思いますが、本人が嫌がれば飲ませません」と伝えました。点滴も本人が嫌がればとって良い様子。痛み止めは本人も必要と判断すれば継続していく予定。今日も結構痛がっていました。
退院初日の自宅での様子
私の目には最近外出で来ていた時のカズマと今日のカズマは全然違うように感じました。どこか安心しているような感じがしました。精神的な苦痛が少し和らいだ感じもします。
相変わらずユリナとおもちゃの取り合いやちょっとしたことで不機嫌さをあらわにしたりすることも見られましたが、笑顔も多く、調子のよかった8月中旬ごろに戻った感じです。
食事はエビフライを1.5個食べられました。
おもちゃで遊んだり、レゴを作ったり、一緒におもちゃレビューの動画を見たり、ユリナがパプリカ歌ったたのを笑ったり、楽しく過ごせました。
明日はどこか行きたいか尋ねると3日前辺りに行ったおもちゃ屋さんと100円ショップとゲームセンターがあるところに行きたいと。時間があるからそのあと遊園地でも行く?と尋ねるとうなづきました。最近遊園地とか動物園とかアウトドアなアクティブなことは拒否してましたが、やっぱりちょっと精神的にも調子が良いのかなと思いました。
今日の感想
今まで「カズマの好きなこと、カズマの希望」を叶えることも治るために必要と思い、おもちゃ屋さんに行ったりウルトラマンのイベントに参加したりを実践してきました。カズマの希望は叶えてあげていると思っていました。
「カズマの好きなこと、カズマの希望」の中に「病院に居たくない」「お家で過ごしたい」「好きな時に好きなところへ行きたい」「好きな人とずっと一緒に居たい」などの希望があることも知っていましたが、「絶対治る」ために我慢してもらっていました。
今までよく頑張ってくれました。いつからか私のエゴだったと思います。妻はもう少し前にこの方向にシフトしようとしていました。妻にも負担を強いていました。
カズマを抱きしめながら謝りました。「今までごめんね。長く入院させて。」カズマは首を横に振っていました。いつだってカズマはパパの味方をしてくれます。ありがとうカズマ。ありがとう。大好きだよ。
これから毎日カズマのしたいことをして、幸せな毎日を過ごそうね。
お互い笑顔でバイバイできると信じてるよ。
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